がもがもミシュガット

この世の全ての物を独断と偏見で適当に採点する!


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一瞬の風になれ
一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ-- 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
佐藤 多佳子


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  2007年に本屋大賞を受賞した作品。佐藤多佳子が、神奈川県立麻溝台高校に実在する陸上部をモデルとして描いた陸上競技小説であり、その取材には3年近くを費やしているそうで。本屋大賞になったことにより、漫画化やTVドラマ化もされているので、知っている人も多いだろう。

 非常に分厚い本で、しかも3部作となっているため、一瞬取っつきづらさを覚えるかもしれないんだけど、1部につき高校生活のおおよそ1年間、それを主人公の1人称で語っているので、読みやすい。高校生の運動部男子らしく…と言おうか、運動描写のリズム感を出している…と言うのか、一つの文節が短くて、言葉が重ねられていく。正直なところ、読み始めた時は、その薄っぺらく感じられる言葉にイラッとしたんだよね(^_^;)。なんかただ、読みやすさと親近感だけで、受けが良かったんじゃねーの…みたいな(苦笑)。全然、作者のことも知らなかったし。

一瞬の風になれ 第二部一瞬の風になれ 第二部
佐藤 多佳子


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 で、実は第一部を読み終えた後に、以前、ブログで書いた「しゃべれどもしゃべれども」を読んだり訳で。詳しいことは、そちらのエントリーを見てもらうとして、「しゃべれども…」も主人公の1人称で描かれているんだけど、「一瞬の風になれ」の主人公とは全く違う昔気質な若者が、べらんめぇ調で語るという設定。しかも「しゃべれども…」の方が、過去に書かれた作品と言うことで、「なるほど、この作者凄いんだ」と納得したんだよね(^_^;)。だって「一瞬の…」の方の主人公は「筋肉脳っぽいなぁ」って思う文章なんだもん(笑)。もちろん、そういうスポーツマンへの憧憬込みでの感情だけど。

 そんな訳で、全く第三者の視点無しで高校の陸上競技生活3年間が描かれた作品なんだけど、前述のような文章の読みやすさもあって、それこそ風のように3年間の高校生活を追体験できる感じ。であるとともに、一流と呼ばれるアスリートたちの超人的な練習を知ることも出来る。分かることは出来ないけど。どう頑張ってもン百回の腹筋とか、腕立てとか出来そうにないからねぇ。でも、その10分の1の辛さを思うと知識の範囲で「スゲーな」と思うということで(^_^;)。

 でも、絶対に到達できない世界だからこそ、その人たちにしか感じられないスポーツにおける「ゾーン」的な世界を、小説という形で垣間見ることが出来るのは、素敵な体験である。3年に渡る取材によって得ているのであろう高校生たちの短くも生々しい言葉の積み重ねによって、非常に感覚を同調させやすい。マンガなどでも描かれたりすることはあるけど、そもそもが抽象的なものであるため、それが絵という形でハッキリ現れると、同調するというよりは、第三者として眺める気分になってしまうんだよね。その点が小説との違い。

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-一瞬の風になれ 第三部 -ドン-
佐藤 多佳子


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 話の大筋としては、最近の少年スポーツマンガの王道のような作品ではある。そんな中で、スタープレーヤーであるサッカー選手の兄とともに歩んできたサッカーの世界を捨て、陸上の世界に入ったことへの苦悩みたいなものが、全編を通して主人公の心に棘のように刺さっているのが本に深みを与えているのかもしれない。ドロップアウトした自分。ここでもドロップアウトするのではないか…という恐怖。一方で、ここではやれるのではないかという期待。必要とされる喜び。それらが、回りくどい言い回しを抜きに飛び込んでくる。

 …とは言え、時折、作者の文章の巧みさには驚くんだよね。前述のとおり、いかにもスポーツ一直線の純朴高校生の語り口な訳だ。目で見たことを、そのまま友達に語っているかのような文章…なんだけど、もちろん、実際にはそれだけでは小説は成り立たない。リアルさを追求すればするほど、小説にならないだろう。「しゃべれども…」のような口が達者な主人公ならともかく。そこで「本当ならこんな表現使わないよな…」と良く読まないと気が付かない文章表現を、上手いこと滑り込ませてくる作者の力量があると思う。そんな訳で評価の方は…

 ★・★・★(三つ星)

 …ということで。多少爽やか過ぎて、個人的には「しゃべれども…」の方が好きかもしれない。陸上ものなら三浦さんの「風が強く吹いている」の方が好みではある。でも、名作であることには違いない。先日、北京五輪でリレーチームが銅メダルを取った時、この小説が頭に浮かんできたんだよね。40秒足らずの世界で、色んな声が聞こえるような気がしましたよ。


gamou [ [ 書 籍 ] 小説 ] comments(2)
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陸上をやってる息子にこの本を薦めたところ
今までにないぐらい夢中になって読んでます。
ドラマを見たこともあって入りやすかったし、
共感出来る部分が多いのがのめり込んだ理由のようです。
ありがとうございました。
他にお勧めがあれば教えて下さいね。
| とっと | 2008/10/01 11:15 PM |
【とっとさん】
コメントありがとうございます〜。
そうですか、陸上を実際にやっているお子さんなら
また一層違った感覚が持てるのかもしれません。
でも、陸上をやっていた訳ではないのに
きっちりと取材をして、陸上をしている人たちに
共感をもってもらえる作品が描けるのですから凄いですよね。
また、何かあれば、こちらで書かせていただきますね。
| がも | 2008/10/04 12:33 AM |









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